“空へ” 上がり

オレの手を離れ、湯熨斗・絵羽(仮縫い)に行ってた 新作着物 “空へ” が、上がってきた。



これから 釉美屋京都展 に・・・

  ← 背中の部分

  “帯で試し” をしたり、最後になってから
  もうひとふんばり “めひき” をしたりと
  手間を掛けただけあって、自分としては
  納得の行く 上がり になったと思う。

  後は、イロイロな方々が どのように評価してくれるかだ・・・
  少々緊張しながら、京都に行って来ようと思う・・・



今年も残すところ、あと一週間・・・    皆さん風邪などひかぬよう御自愛下さい。



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2008年12月25日 Posted by 染師 麗 at 10:30訪問着 “空へ”

めひき

釉美屋京都展 に出品する 新作着物 も、ドライが終って お・し・ま・い!・・・
  が、しかし もう一息 粘ってみようかと・・・
“地色” 決して悪くは無いんだけど、キットもっと良く出来るはず・・・

イロイロ考えた結果、一番 労少なくして、効多い  “めひき”  をやる事に。

“めひき” っていうのは、全体的に 無地染 のように 同じ染料を引いて 
配色を落ち着かせたり、雰囲気を少し変えたりと、割と少ない手間 で 効果 を出す仕事なんだ。

  
↑ 地色を少し汚すって位の 生成り(矢車) を   ↑ 地色で試してみる。 (簡易蒸しもする)
現在の地色と 大差無い ような感じだけど、ヤッパやった方がいいかも・・・

  ← 無地染 をやるように全体的に “引き染”

  地 も 柄 も関係無く “無地染をする” 感覚で

  媒染していると、撥水するようになり
  生地に染料が 入りづらくなるので
  浸透剤 を混ぜての 引き染

その後、乾いたら 染た時と同じように 蒸し・水元  (今回は蝋等、防染材を使ってないのでドライは無し)

全部 終ってみて、やはり もう一手間 掛けて良かったようだ。
気分的にも “やりきった” って感じで、悔いも残らなかったし・・・  
自画自賛だけど、なかなか “イイのが上がった!” と思う。


後は、湯熨斗をして仮縫いに・・・   (もうオレの手を出すとこは無くなった)


  ← 作品にはならないけど 作品を創る上で
  “裏方” となって、いろいろ 試し染 した端裂

  お・つ・か! でした。

  またひとつ 頭の中のイメージが現実となった。
  今は、そんな  嬉しさでイッパイ!


さて、仮縫いして 上がりはどうかな・・・?   ワクワクする。           じゃ!



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2008年12月16日 Posted by 染師 麗 at 10:50訪問着 “空へ”

ドライ クリーニング

オレの オヤジ(大仙人様) はクリーニング屋をやってて、元々はドライクリーニングを専門でやってたんだ。
クリーニング屋さんの洗濯物の中でも 水洗物 (Yシャツとか水洗い物) と ドライ物 (背広やセーター等) が 
あって、ウチはそのドライ物だけをクリーニング屋さんから集めて ドライクリーニング中心 でやってたんだ。

オレのやってる “染” では、油性防染剤 (蝋やゴムのり) を使うので、最終的にドライの お世話になるんだ。
ウチのオヤジがドライをやっていたお陰で、オレの師匠 と オヤジが知り合い、当時 プラプラ してたオレが
この “染” の世界に入るキッカケになったんだ。   (ホント!縁は異なもの)


さて、一般の方々は ドライクリーニングといっても イマイチ良くわからないと思うので 少々御説明など・・・

  ← ワッシャー (wosher)    洗う機械です。
  手前に見えるのが 振り切り (脱液機)
  このワッシャーの中に “ターペンタイン” という
  石油系の溶剤が入っていて、それで洗ってやるんだ。
  油系の汚れは水洗より油で洗ってやる方が良く落ちるし
  セーターや背広のようなウール物は水で洗うと
  ガサガサになってしまうけど、油なら大丈夫。

この ターペンタイン というのは 大雑把に言ってしまえば 灯油のようなもの。
そのターペンタインが機械の中を循環して 衣類などに付着してる 油系の汚れ を洗い落とし、
その落ちた汚れを フィルターで濾しとって行くって感じ。   (大雑把にはそんな感じ)

  ← 乾燥機
  洗い終わって 絞られた衣類を コイツで乾燥させる。
  オレがガキの頃は まだ 乾燥機 など無くて
  普通の洗濯物のように屋外に乾して
  自然乾燥 させていたんだ。
  (時間がタップリあれば、それで充分だけどね)


この後、クリーニング屋さんではアイロン掛けをして仕上がるんだ。
一般的な衣料は、これでクリーニング終わり。


さて、普通 一般的な模様師さん達 は、この仕事を “外注” に出してるんだけど
オレは ウチが ドライクリーニング などしてるので、ドライも自分で やっつけるんだ。
・・・そして この後 最終的な “水元” をして、生地に付着してる 余分な染料 を水で洗い落としてやるんだ。
そして、染めた染料の他に 余分なモノが無い状態 になって “染終了!”    ハイ お・つ・か!


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2008年12月14日 Posted by 染師 麗 at 13:24仕業中

蝋取り

どうも オレはセッカチな性分で、仕事に掛かると “早く上がりが観たい・・・” となって
良くも悪くも ガンガン飛ばしてしまうので、その後に “廃人化” してしまう・・・

昨日までで、とりあえず無事に仕事が終ったので、本日 もう ボロボロ・グズグズ・・・

でも、まだ 蝋落とし したり、何やかやと “仮縫い”(これは人にお願い) までしなければならないので
ガソリン切れの オ・ン・ボ・ロ CADELLAC もうひと転がし・・・


  ← 今まで一生懸命置いてきた蝋を取る・・・
    (複雑な心境・・・)

  今回の仕事は 新聞紙 で蝋取りしても
  大丈夫そうなので 楽チン。
  ワラ半紙だと 蝋取りできる面積が少なく
  時間がすごく掛かるんだ。


  
↑ 最終的な 蝋取り 前                ↑ 蝋取り 後


  ← その後 蒸しをして、ドライ前の水元

    “ハイ! お・つ・か!”

  蒸しが終ると “上がり” の大体の見当が付くので
  昨日までの “ワクワク感” が少しづつ消えていく・・・
  そして・・・   現実に直面する



  ← 鉄で媒染すると 生地の表・裏の地色に
  “差” が出る事が多々あるんだ。
  これは、媒染の反応の速度によるものなのか
  何なのか良くわからないんだけど・・・

  まぁ 今回の場合は 着物 なので
  それ程大きな問題では無いんだけど・・・


それよりも、なんか 裏側の色 の方が自分のイメージに近いような感じ・・・?
勿論 表の地色も悪くは無いんだけど・・・      う~ん・・・
何にせよ ドライしなければ次の工程に入れないので、それまで一休み。  また新たな気持ちで。

オンボロ・キャデラック しばし車庫に・・・     廃人暮らしの始まりか・・・?



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2008年12月10日 Posted by 染師 麗 at 11:19訪問着 “空へ”

掛色&垂らし込み

さて、着物の地色は 如何に・・・      と、不安半分・期待半分で仕事場に・・・

“おっ! なかなか いいジャン!”  と一安心。

てなわけで、最後の大仕事へ オンボロ・キャデラック 火を噴きながらラストスパート。



  ← またしても ドライヤーであぶる。
  今回は 全体的に かなり蝋を溶かしてやって
  最後の 掛色 の “垂らし込み” へ。

  最初のベースの地色地色の掛色、今回の
  蝋の掛色の垂らし込みの前と 三回に渡り
  ドライヤーであぶってやった。

  


  ← そして “垂らし込み” をやる前に 
  “影” となる部分を 堰出し

  今回は、前回 帯で試した時 より
  影の色を 淡く してやるつもり。
  この間、どんな感じで垂らし込んでやるか
  頭の中でシュミレーションしながら・・・

イメージトレーニング?も終わり、垂らし込む染料を創ったら “浸透剤” を染料に混ぜる。
 (浸透剤って言うのは、水分をハジクような時に入れてやると良く染み込む助剤なんだ)

  
↑ 先ずは大雑把に 垂らし込む染料を 蝋の上に乗せていく。
紙 や 生地 の上に 直接仕事をするのとは違い 染み込み方がユックリなので 割と楽チン。

  
↑ 後は、調子を整えながら 全体の様子を見る。

  ← 合口を合わせながら もう片側も やっつける。

  生地を並べて 仕事が出来れば いいんだけど
  狭い 仙人の仕事場 では無理なので
  こんな感じで チェック しながら仕事を進める。
  生地が並んでいれば 確認は楽なんだけど
  裏側からの確認で 頭から火が噴きそうになってる。

まだ完全には乾いてないけど ↓ 大体こんな感じで終了。

  


後は 蒸し・ドライ・水元 をしてから、最後の様子を見るつもり。

やるべき事は一通り終ったので、なんか気が抜けてしまい  ボロボロ っちゅう感じ・・・



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2008年12月09日 Posted by 染師 麗 at 10:01訪問着 “空へ”

地色創り

ここまで快調に飛ばしてきた制作だったんだけど、ここでチョット スローダウン。

まぁ、大部分を占める “地色” の事なので 焦らず時間を掛けて・・・

今回の 着物 の地色に考えてる “青磁” なんだけど、これは勿論 陶磁器の 青磁 から来てるんだけど
オレが師匠の元にお世話になり始めた頃 師匠から聞いた話で、この 青磁 という色は
皇帝が陶工に (詳しくはうろ覚えなんだけど) “この曇った空の色を写せ” と命令して
“創らせた色” だったって言う話を聞いた事があるんだ。  なんか 雄大 で ロマン がある話だよネェ。 
制作する前 いまいち ピン と来ないで しばし放ってあった図案だったんだけど、美術館めぐりをしてる
移動の途中で ふと空を見て、この事を思い出して、地色を変えるだけで GO! になったんだ。



  ← さて、ベースとなる 銀鼠 は出来ているので
  青磁 になるように 掛色 を創る。

  天然染料では青系の色が窮めて少ない上に
  今回は 鉄媒染をしてるので、化学染料のお世話になる。
  矢車 に 化学染料 を少しづつ混ぜながらの 掛色創り。
  たまに 気になった色 をカットして試し蒸し。

  ← “掛色” も出来て、染に入る前に
  もう一度 ドライヤーあぶり をする。

  最初に染めた 銀鼠 と今回 上から染める
  ミントグリーン の色のピークを 蝋を溶かす事で
  微妙にずらして 深み を持たせてやろうと考えてるんだ。
   (果たして“上手く行く”かは別として・・・)

  ← とりあえず 染め終えて。

  まだ、乾いてないんだけど 今のところ
  なんか いい感じ! っぽい。

  この “ワクワク感” を味わいたいが為に
  “モノ創り” を続けているのかもしんない。



・・・さて、乾いた生地は カッチョイイ色 に成ってますでしょうか?   心配だけど楽しみ!

もう、眼はガチガチ・身体ゴキゴキ・・・     本日も昼出勤になってしまった・・・    いってきま~す!



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2008年12月08日 Posted by 染師 麗 at 11:33訪問着 “空へ”

 ドライヤーあぶり 下染め

前日 思わずも一日で終った “蝋置き(白蝋起こし)” だったんだけど、
眼・腰に “ジジィ性ダメージ” が残り ユル~ク お昼頃から ボチボチと仕事に掛かる・・・

本日、最初の仕事。   必殺技! ドライヤーあぶり!

  ← ドライヤーの 熱風 で蝋を溶かし
  蝋のエッジを柔らかくしてやるんだ。

  前回、着物を染める前の 試しに染めた帯 が
  なかなか良い感じに染まったので
  もう少し工夫しながらドライヤーで蝋を溶かしてやる。


 → 
↑ “白蝋起こし” をした状態               ↑ ドライヤーであぶってやった後

蝋の 厚い部分 の “エッジ” がドライヤーの熱で溶けて “カチッ” とした感じではなく
“ボヤ~ッ” とした感じになる。  (だいぶペタ~っとした感じ)
今回の着物は “狼煙(のろし)” のような煙のイメージなので、こんな感じが良さそう。

唯、全体的に 同じように 蝋を溶かしたのでは面白くないので
かなり溶かして ペタ~ッ とした部分と、幾分 エッジ の残ってる部分を 適度に混ぜながら仕事を進める。

この必殺技、一見簡単そうなんだけど “蝋の溶け始め” の見極めに少々コツ?がいるんだ。
ベタ~ッ とさせてしまうのなら 特に気を使う必要は無いんだけど、
やや エッジ を残しながら 溶かすような場合、溶け始めの 少し前にドライヤーを外さないと
思ってる以上に 蝋が溶けていってしまうので 注意が必要なんだ。
  (自分で染をやってる人 が居たら面白いと思うのでやってみてネ!)


さて、当初の計画では 地色は “少々青味の銀鼠” と思ってたんだけど いまいちピンと来ずに放って置いた。
・・・で、美術館めぐりをしてる間に ハタと思いついた “青磁” に決定!  
    (今回は少々 化学染料の御世話になりそうだ・・・)



  ← 先ずは、ベースとなる下地を染める。

  薄めの 矢車 に、青味が出るように
  ヘマチン をほんの少々混ぜて 引き染。

  (下地の段階では、まだ天然染料オンリー)


  

・・・そして・・・

  ← 染料が乾いたら 次は 鉄媒染

  鉄で 媒染 してやると どの染料も
  色が 暗い方向に 落ちていくんだ。
  だから 中色より薄めの地色の場合は
  染料 も 媒染剤 も幾分 薄めでの使用。


  



  引き染が終ってからも “半乾き” になる位まで
  蝋の上の染料を 摺り込んでやる ように
  しばらく面倒を見てやるんだ。

  2~30分も経てば染料も落ち着くので
  その間 面倒を見てやると 上がりも違ってくるよ。



とりあえず、ベースになるところまでは辿り着いた。  これからが正念場。       じゃ!



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2008年12月06日 Posted by 染師 麗 at 09:59訪問着 “空へ”

白蝋起こし

さて、仕事に掛かり始めた 釉美屋京都展 に出品予定の着物でありますが、

いきなり今回のメインの仕事 “白蝋起こし” に掛かる事に。
まぁ、一度 帯を創って経験してるものの 着物は合口があるので、更にキンチョーする・・・


  ← 白蝋起こし は、順を追って。

  図案を見えるとこに置いて確認しながら。
  今回は背中の合口が、ずっと続くので
  先ずは基になる方を考えながらの蝋置き
  (今回は下前側の背中より仕事を始める)


  ← 基になる片側が出来たら(下前側)
  そちら側と 蝋の濃淡 を合わせる様に
  (勿論同じには出来ないけど、出来るだけ)
  常に蝋置きの終った片側を気にしながらの仕事。

  (見上げてるのは、上写真で先に蝋置きの終った
  下前側の 蝋の濃淡 を確認している図)

蝋置きの仕事を同じ側でやってないのは、無地場のある部分に もし蝋が垂れてしまった場合
無地場でのゴマカシは大変だけど、蝋のある部分ならゴマカシが利く為なんだ。
  (勿論 蝋は垂らさない様に仕事をしてるんだけど、時たま思わぬハプニングがあるので
   リスクは出来るだけ小さくするように注意しながら)


  それでなくても広くは無い仙人の仕事場
  ← こんな状況で頑張ってます・・・

  ・・・そんなこんなで、合口等があるので 
  二日は掛かるだろうと考えてた “白蝋置き” だったけど
  一日で出来上がってしまった。
   (タップリ一日だったけど)

一日で出来てしまえば “手” の感じも同じだし、日によっての気温の違いなんかでの影響も違うし
メデタシ・メデタシ!といったところ。   仕事が速くなったのかなぁ・・・ナンチャッテか!


終日 “張りっぱなし” の仕事だったので、本日 腰がゴキゴキ・眼はガチガチ・・・       チャンチャン!



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2008年12月05日 Posted by 染師 麗 at 10:10訪問着 “空へ”

裁寸・裁断 下絵写し

いやいや 寒くなってきましたネェ~     皆さん風邪などひかぬよう御注意下さい。

図案を描き上げたまま いまいちピンと来なかった 釉美屋京都展 出品用の着物の制作に掛かる。

先週末に買った生地も到着し、先ずは 裁寸・裁断・下絵写し から

  ← 何度も裁寸して “良しOK” となって
  生地にハサミを入れる。
  ここで、違った場所を切ってしまったら
  取り返しが付かないので、一番キンチョーする工程。
  たまに生地がよれて、下に廻り込んだ生地を一緒に
  切ってしまう事もあるので (幸いオレはまだ無いけど)
  裁断は、特にキンチョーするんだ。

  ← 裁寸・裁断が終ったら いつものように
  先ずは 下絵写し から始める。

  着物の場合、図案が大きいので 下絵を写すのが大変。
  生地がずれないよう注意しながら・・・
  “設計図を写す” という大事な作業なので
  この工程も 地味だけど とてもキンチョーする。

  ← 下絵を写し終えたら それぞれの部分を
  実際に合わせてみて再確認する。
  素人さんはこの作業をせず 染め上がってから
  “ヒエ~柄が合わない!” という事になったりする。
  この作業をしてるお陰で、写し忘れを発見したり
  柄のズレを見付けたりと 何度も救われてるんだ。
  そんな ほんの僅かな事が上がりを左右させるんだ。

・・・といった 見た目は地味なんだけど、重要な仕事を終え 一安心。
後は、上がりに向けて オンボロ・キャデラック をぶっ飛ばすだけ。        イ・ク・ジェ!



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2008年12月04日 Posted by 染師 麗 at 09:59訪問着 “空へ”