ドライヤーあぶり (空へ)

着物の製作の前に “帯” を染めて、頭の中のイメージをハッキリさせる仕事に掛かる。

もうすでに図案は描けているので 下絵写し を経て、今回は一度染めてから 堰出し をするので
裏エン (裏鉛筆) なる技を。 (たいした技じゃないんだけど・・・)

↑ 下絵を写し終わった生地を裏返して、堰出しする部分を 鉛筆で当たりを入れといてやるんだ。
仕立て上がれば、内側に入り込んで見えなくなってしまうので問題は無いけど出来ればあまり目立たぬように
かといって当たりが薄いと染めてから見えなくなってしまうので、その辺を加減して。


  ・・・でもって白ロー置き  (白ロー起こし)      

  今回の仕事も 見た目は前にやった仕事と同じ。
  
  だから工程は 関連記事 から観てチョ!



・・・でもって、先ずは地染。     今回の地色は 幾分青味の “銀鼠”
 → 
染料 は 矢車 に ヘマチン を少し加えて 鉄 で媒染。
矢車を鉄媒染してやっても 銀鼠 になるんだけど、蒸しすると どうしても少し黄味を帯びてしまうので
クールな感じで 少し青味を持たせてやるのに 少々 ヘマチン を混ぜてやったんだ。



・・・さて今回、前回までの仕事とはケッテー的に違うのは (オレにとって)
白ロー起こし をしてからドライヤーを当てて、蝋をかなり溶かしてやってるんだ。

  今迄も こんな感じの仕事の時はドライヤーを当てて
  蝋を少し溶かしてやってたんだけど
  今回は かなり溶かしてやったんだ。
  こんな感じで蝋を溶かしてやったら 上手い仕事も
  下手な仕事も あまり差が無くなってしまい
  “腕の差を見せ付けちゃる!” ってところが
  無くなってしまうのが 嫌だったのかもしれない。

それが “まぁ、それもイイかなぁ” と思えるようになって来たというか・・・
人生 半世紀も生きてると 段々と角が取れていくのかなぁ・・・
これを  進歩  と呼ぶのだろうか?   それとも・・・???

そんなこんなを考えながら、仕事に励む 仙人 であった・・・


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2008年10月31日 Posted by 染師 麗 at 10:20仕業中

裁寸

イロイロな雑用をこなし、さて寝かしておいた 着物の図案 は、どうかなぁ・・・

見直してみて図案としては “ヨシいこか!” となったんだけど、いまいち上がりが頭の中に しっかりしない・・・
普段なら、雛形を描いて 本図案を描き終わる頃には、大体の上がりがイメージできるんだけど
今回は それがイマイチ ハッキリとしてこない・・・    このまま本チャンに入ると キ・ケ・ン!
・・・って事で、一度 “帯” で試してみようと 帯図案を描いて、先に帯を染めてみる事に。
  (着物図案を描いていたので、割と簡単に帯図案は上がった)

・・・帯の染めに入る。

  ← 裁寸 (寸法を測る) してるところ

  ここで測り間違えると、上手く上がっても商品とならない。
  先ず 一番最初に緊張する仕事

  オレが使ってるのが “二尺指” (二尺のモノサシ)


オレラの世界では、未だに仕事をする時は メートルではなく “尺” を使ってるんだ。
四半世紀、この世界でやって来たので こと仕事の事は、メートルより尺の方がピンとくる。
 (普段の生活では、いくらジジィだといっても メートルの方がピンとくるんだよ)

さて、長さの単位 “尺度” は、衣料の売買・裁縫・建築・土木・測量 等々と
生活に重要な意味を持っていたんだけど、 “物指し” の構造は簡単である為 模造され易く
多様な 尺度 が、地方・職業によって存在したらしく、なかなか全国的な統一が難しかったらしいんだ。


  ← オレの使ってる二尺指 (くじら尺)
  ひとつの区切られてる部分が一寸
  小さい一目盛りが一分


ただ 制度的には定められてなくても “曲尺 (かねじゃく)” が、基準の 尺 の役目をしてたらしいんだ。
曲尺 っていうのは主に建築などに使用されてたのに対し、民間では着物・裁縫等に
“くじら尺 (呉服尺)” が使用されてたそうなんだ。   (くじら尺は曲尺の1.25倍)

昭和33年12月31日にメートル法以外の使用が禁止されたそうなんだけど
あらゆる分野に浸透した “尺貫法” は未だに痕跡を残してるんだね。
 ちなみに 10分=1寸、10寸=1尺、10尺=1丈   1尺=約37.8cm(くじら尺)、 約30・3cm(曲尺)

・・・さて、長くなってしまった。

  ← 裁寸して印を打ったところ

  間違えないように何度も裁寸して鉛筆で印を入れる

  左から △印が おなか
  〇印が お太鼓  |印が かえり

オレが師匠のとこにお世話になった頃には、おなか・お太鼓間の長さは 2尺4寸5分 だったんだけど
現在は 2尺6寸 になってるんだ。  段々と体型が良くなってるんだね。
 (着物も幅が広くなってるし、身丈も伸びてる)

長くなってしまったんで、今日はここまで。      チャンチャン!


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2008年10月30日 Posted by 染師 麗 at 10:30仕業中

黄八丈 カビ直し

ここのところカラッとした好い日が続くネェ。  地色を染めるには もってこいだ。

福寿の袱紗・第2ラウンド も 昨日から地色の染めに入って、乾くまでの間 時間があるので
自由が丘・扇屋 さんに頼まれた 黄八丈のカビ直しを 朝から袱紗の地染と並行しながら・・・

  ← こんな感じに ところどころに
  カビの白斑が出ていて (おそらくカビ)
  これをもう一度 媒染 して元の色に戻してやるんだ。

  コイツラは どうもバクテリアに媒染剤がやられ
  元の染料だけの色になってしまってるようなんだ。


被害の程度が軽ければ、蒸し を一発カマしてやると カナリ良い状態になるんで 先ず蒸しに入れてみる。

・・・蒸し上がってみても、状況はそれほど変わらず。   

  ってなわけで次の処置へ
  ← 酢酸アルミの少々濃い目の 媒染液 の中で
  全体的にムラの無いように 20~30分 繰ってやる。

  これがナカナカ地味で大変な作業なんだな・・・   
  着物を一反張れれば、媒染剤を引いてしまえば 
  いいんだけどねぇ・・・   (広い染場が欲しい!)

  媒染液の中での作業が終ったら
  一度 水元 をして 乾燥

  ← それでなくても広くは無い 仙人の仕事場は
  生地達に占領され 開店休業状態

  乾燥後 “なかなか良くなってるジャン!”

もう一度 最後の 蒸し をカマしてやって “ハイ いっちょ上がり!”    
・・・と行きたい所なんだけど、状態のひどかった所が まだ少々気になるので “地直し” をやる。

  ← 黄八丈の染料は 八丈刈安 というヤツで
  オレの使ってるのは 近江刈安 なんだけど、まぁ大差ネェ
  って事で、刈安染料を薄めて 地直し をやっつける

  ドライヤーであぶりながら、繊維の口を開けてやり
  濃くならないように 気をつけながらの作業
  その為に かなり “薄めの染料” で回数勝負

ほぼ一日掛かってしまったけど、直し物としてはナカナカ上手く行ったと思う。    めでたし・めでたし!

※ 黄八丈は 八丈刈安を 椿や榊の灰汁で媒染してるようです。
  このような明るい発色をする媒染剤は、アルミか錫なので オレはアルミで媒染してやりました。
  細かい事にこだわるより、良い結果が出る方が大切と思うので・・・

直し物なんかもやったりする 器用 貧乏 な仙人であった。      チャンチャン!


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2008年10月23日 Posted by 染師 麗 at 01:01仕業中

福寿の袱紗 第2ラウンド

着物の図案は一応描き上げたんだけど、しばらく寝かして 気持ちが落ち着いてから見直して
それでイイようだったら、仕事に掛かるつもり。 (今はまだ興奮してるので良く見えるから)


  ・・・で現在、 福寿の袱紗 の図案を描き直したヤツを
  染めているんだ。

  ← 左が現在進行中  右が仕立て上がってきたヤツ。
  実際 仕立てみないと ハッキリとわからないなぁ・・・
  仕立てて、また図案描き直しなんて事もあるかも・・・
        (仙人の修行はマダマダ続く・・・)  

・・・で本日、地色染
  
↑ 表から染めて                    ↑ 裏側からも “裏刷毛” をして
出来るだけ表裏の差が無いようにしてやるんだ。  表と裏で色の差があるなんて あまりカッチョ良くないんだ。

友禅したところを “白ロー” で伏せて 地色を染みさせる ようにしてるので 一端染め終わってからも
染料が半乾きになる位まで 時々 “空刷毛” を入れて面倒見てやるんだ。
  
↑ 染料を引いたばかりの時             ↑ 半乾きになった頃
“摺り込んでやる” って感じで白ローの上を円を描くように。
左写真の様な感じのまま面倒を見てやらないと 蝋の上の染料のブツブツ が、
そのままの感じで残ってしまうよ。    特に一番最初に染めた時は重要!

さて、今回の図案で上手くいくんだろうか???         チャンチャン!


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2008年10月21日 Posted by 染師 麗 at 23:23仕業中

本図案

現在 釉美屋 さんの 京都展に出品する着物、小物の製作中・・・


雛形3点 の中から ↑ コイツに決定!  ・・・で、本図案に掛かっている最中。
    狭い仕事場は、図案紙でイッパイ

この広げて描いてる図案をですね・・・
  
↑ こんな感じで身体に巻きつけてみて、着てみた感じをイメージしながら
柄を足したり、削ったりと試行錯誤しながら図案描きに励んでるですよ。



・・・で、とりあえず一度 墨描き。    う~ん・・・ どんなもんだろうねぇ・・・

そんなこんなで 図案描きの毎日・・・         チャンチャン!



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2008年10月18日 Posted by 染師 麗 at 10:21訪問着 “空へ”

福寿の袱紗 手直し

本日、以前に染めた “福寿の袱紗” の仕立上がりをを持って
釉美屋 さんが、引き合い (打ち合わせの事) に来たんだ。

  ←早速 熨斗袋を包んでみると・・・

  ・・・なかなか い・い・ジャン!

  4ヶ所 何処から包んでも それなりに柄が出る様に
  図案を考えてるんだけど、ここの面が メイン なんだ。


  染めてる時は “染” に夢中になってるので
  それほど気にならなかったんだけど
  広げてみた感じが いまひとつ・・・
  釉美屋さんは “包んだ時がメインなんだから”
  と言ってくれたんだけど・・・
  広げた時も カッチョイイ 方がいいから
  もうチョット図案描き直してみる  ・・・と言う事に。


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2008年10月10日 Posted by 染師 麗 at 23:36仕業中

オレって老人だったのネ・・・

オレは昔から眼が悪く (近視&乱視)   でもそのくせ眼鏡を掛けてなかったんだ。

先日 100円ショップを見てたら “老眼鏡” が置いてあって、眼鏡なんて高級品 (仙人にとって) なのに
“こんなんで見えんかよ~” と掛けてみたら ボヤ~ッ として全然良く見えず
“見えねぇジャン! 何でこんなもの売ってんだろ???” と 手元 を見ると
“ゲッ!良く見える・・・”     掛けてないよりは良く見えるかも・・・ 

  ・・・ってなわけで、ひとつ購入。

  普通のヤツは¥100で売ってたんだけど
  ←この オシャレ??? なヤツは倍の¥200
  ・・・貧乏仙人だけど、チョットだけ奮発

老眼鏡って、老人が掛ける眼鏡ってことだよネェ・・・

知らぬ間に “老人” になっていた事に おおいに凹んだ仙人であった。

“くそっ! ファンキーなジジィになっちゃる!”           

お年寄りは大事にしよう!                   チャンチャン!



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2008年10月03日 Posted by 染師 麗 at 22:11日々平安