染に未来はあるのか・・・ 1

 “プリント技術の進歩”

現在の工業技術の進歩ってスゴくて
“プリント” に “染” と言うジャンルがどんどん駆逐されてるような気がするんだ。

勿論、当たり前の事なんだけど決して プリント というものが悪いわけじゃないんだ。

プリントで 質の良い 安価なもの が沢山出回ってくれば
消費者(お客さん)にとっては、とても良い事だと思うしね。

プリントする という事は 基本的にはある程度の大量生産で
コストを下げると言う事なんだから
多くの人に 安く提供できる というとても良い面があるし
また、昔に比べると格段の技術の進歩で本当に質の高いモノになってきてるしね。

“じゃ、プリントでいいジャン!” って事になっちゃいます???

そうなんですヨ。
だからこそ、染は 染としての良さ が無ければ残っていけねぇんじゃねぇの!
オレそう思うんですヨ。
キチンと 染の良さ を表現して,伝えてかなければ、やはり 淘汰 されてしまうのは当然の事だと思う。

・・・世の中そんなに甘くない。



でも、折角 “日本の文化” の端っこに関わってるのだから、なんとか 染 を残したい!

“染” そのものが無くなってしまうということは無いと思うんだけど
(何故なら、やっぱ人間てモノを作るのが好きだから・・・)
先人から脈々と伝わってきた “文化” としての 文様染 って もしかしたら
もう “絶滅危惧文化” のランプが点灯してっかもしんない・・・

別に プリント に押されてるのを巻き返す必要なんて全然無いんだけど
キチンと 文化 として残さなきゃいけないと思う。
それには先ず 現場に立ってるオレらが姿勢を正してやってかなきゃな。

    しっかりしなきゃ・・・                   じゃ!



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2008年01月31日 Posted by 染師 麗 at 00:03危機感

染に未来はあるのか・・・ 2

“呉服屋さん、染 と プリント の違いわかる?”

太平洋戦争が終わって、東京オリンピックあたりから日本の景気はどんどん良くなって
オレの師匠がまだ修行をしてた頃は、呉服は作ればガンガン売れてたらしいんだ。
景気は良くなってるし、今に比べればまだ着物を着る人も多かったしで・・・

そうなれば勿論、量産体制になってくるよね。
それは別に悪い事じゃ無いんだけど
今まで 友禅 や ローケツ をキチンとやってたのに
手を抜ける カッティング・シート や ダック というものが流行しだしたんだ。

カッティング・シート : 透明なシールを生地に貼って カッターで模様を切り、
染料や顔料を摺りこんだり、ピースガン(エアブラシ)で吹き付けて 模様を描くんだ。
ダック染料 : 染料に混ぜて、彩色後に蒸しをするとその部分が撥水して
生地の裏側から染めればローふせ・ノリふせをしなくてもいいが
それらを後々 ドライとか水洗で落とす事はできない。 テントの防水に使うやつらしい。

カッティング・シートなんて手先の器用な子なら1ヵ月もあれば、そこそこの仕事ができるようになってしまうんだ。
だけど修行して 友禅 やら ローケツ やらが、ある程度カッコがつく様になるまで年月掛かるし
それまで人間を育てるには 金 も掛かるしね。
だから、手っ取り早く 銭もうけようと思ったら カッティング・シートやダックが便利なんよ。



オレ、百歩譲って それはそれで いいと思うんだ。

ただそこで、その時 これらはカッティング・シートやダックだと明確にして
キチンとした友禅・ローケツと区別をした上で、値を落として大量生産すれば良かったんだけど
ちゃんとした仕事も、手抜き仕事もほとんど同じように扱っていたので
“染” というものを良く知らない一般の人には、ただ呉服だから価値があるって感じで
本当の 染 と言うものを余計わからなくさせてしまったんじゃないかなぁ・・・
(その当時、オレはまだこの業界とは 全然関係なかったから、詳しい事はわからないけど 多分そんな感じだと見当はつく)

勿論、そんな事をやった業界(模様師)は悪いんだけど
一般の人との直接の架け橋になる 呉服屋さんが、その当時
“これは丁寧な友禅・ローケツだから、手が掛かってるので値段が高くて
これはカッティング・シートやダックだから値段が安いんだ” と、お客さん(一般の人)を 教育 してたら
もっと 今現在 染 と言うものを理解できる人が多かったんじゃないかなぁ・・・
   (でも、キチンとやってた奴が居たから今に続いているわけなんだけど)

今ではそんなカッティング・シートやダックをメインでやってる工房なんて無いと思うけど・・・
それと こぼれ話になるけど、その頃カッティング・シートをマスター?して独立してった師匠の知人達は
とっくの昔にやめてしまった と言う事なんだ。    あったりまえだよね!

そうやって “文化” の質を落としてきてしまった教訓をシッカリ受け止めて
キチンとした 質の高い 仕事をしてかなきゃと ツクヅク想う。

     シッカリしろよ! オレ!                        じゃ!



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2008年02月01日 Posted by 染師 麗 at 00:17危機感

染に未来はあるのか・・・ 3

“顔料で描くだけのインチキ染教室”

2005年 秋 九州で一ヶ月間 展示会をやっててイロイロな人に会ったんだ。

その中で “私も染をやってるから見て・・・” と言って自分の作品を持ってきた人が居たんだ。
その人は ○○染色学院とかいう所でやってるって人だったんだけど
それは ほとんど 顔料描き のとこで紹介した、直に生地に顔料で描くやつと同じようなものだったんだ。

その人は “これが糸目で・・・これが・・・これが・・・” と説明してくれるんだけど
オレと美術館の館長は 唖然としてしまったんだ。
その人は とても素直な感じの人で (だからなんだろうけど) 何の迷いも無いから
オレと館長は “それはチョット違うんだよ” と言い返す言葉を無くしてしまったんだ。
決してその人が悪いわけじゃない。  何も知らない無垢な所に そのように教えられたからだ。
さらに怖いと思ったのは、その人が今度は 教える立場 の人になるって事だったんだ。

もし、その時会ったのが ○○染色学院の お偉いさん とか 幹部の人 だったら
オレはボロクソに言ってたと思う。
もしかしたら 包丁 とか 金属バット を振り回してたかもしんない・・・



顔料描き って決して悪いもんじゃないんだ。
オレのブログで紹介した時、興味を持ってくれた人も多かったよね。
伝統的な 染 に比べて はるかに簡単に始める事が出来るし 蒸ししたり ドライしたり なんだかんだという
手間も掛からないから “染でも始めてみよっかな” という人にはとても良いと思うんだ。
そして、もっと興味を持ってきたら ちゃんとした 染 に入ってくればいいんだから・・・

オレ思うに、そういった 学院とか教室 の教える側の先生は、もっと本当の染も勉強して
生徒さん達に “昔から続いてる染っていうのは こんなのもあるよ” と教えてあげて欲しい。

脈々と続いてきた “文化” としての 染 に,もっと敬意を持って欲しい。

その上で 自分達のやってる事 に自信を持って教えてあげればいいのに・・・

勿論 続いてきた染っていうのも 文化 なんだから、新しい技法・技術・材料・他が出てきて
変わっていくのは当たり前なんだけど
先人から受け継がれてきたものにも、もっと敬意を払うべきだと思うんだ。

ちょっとコーフンしてるので インチキ染教室 とか書いてしまったけど、それらがあるのは決して悪い事じゃない。
多くの人に モノを作る喜び を教えてあげて欲しい。
だけど、それと共に 文化にも もっと敬意を持って欲しい。

   どうか、お願いします。                         じゃ!



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2008年02月02日 Posted by 染師 麗 at 09:15危機感

染に未来はあるのか・・・ 番外

1・2・3 とオレの思う問題?について書いてきたんだけど・・・

こと 自分に於いて悩んでる事

オレの師匠、その師匠、そのまた師匠と続いてきてる 文様染で なんだけど
今現在のオレ 弟子 を抱えてあげられないんだ。
何故かっちゅうと、自分が暮らしてくにも 事欠く次第で
とても 弟子の面倒なんて見て上げられない。  (← 情けナァ~)

弟子をとれば、その子の給料はもちろんの事 その子が ある程度育つまでには年月が掛かるし
その間 失敗したり 上がりの悪いの作ったり 何やかやとお金が掛かるわな。
   (オレもそうやって師匠に面倒見てもらって、今 エラソーな事言ってるわけだけど・・・)
自分が暮らしてくにも収入が安定しないからバイトとかしたりしてるのに
弟子の面倒見るなんて  は、とても無理・・・

じゃ、いったい いつできるの???
これから 業界 もっともっと キビシくなるだろうし、いったい いつになんだか・・・?



でも、なんとか この続いてきたものを つなげていきたい。

できるなら、直接 仕事をしてるのを 見て 感じて 自分でやって その感じをわかって欲しい。
そして、また次へとつなげていってもらいたい。


それには、やっぱり “弟子” というのが一番なんだけど 今のオレ にはとても無理・・・

仕事をする上で、イロイロ悩む事はイッパイあるんだけど
この問題は、いつも心の隅に引っかかってて かなりのウェイトを占めてるんだ・・・
マァ こんな事は自分の問題で、自分で何とかしなきゃいけないのは勿論わかっちゃいる・・・

だから、当面 今は “ほんの少しでも次世代に残せれば・・・” という思いもあって
ブログで 染 を伝えていくしかないんだけど・・・


   ホント しっかりしろよ! オ・マ・エ (オレ)          じゃ!



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2008年02月03日 Posted by 染師 麗 at 11:57危機感