染って・・・ 1

  今現在、感じてる事です。
 ( 前もって弁解しときますが、あくまで私見です・・・)



日本の 染 というのは、歌舞伎や落語・・・また寿司や漬物のように日本特有の“文化”だと思います。
もちろん世界には様々な染がありますが,日本の染はやはり独特だと思います。

細かく緻密な仕事は、やはり日本人の生真面目さ (善い・悪いはともかくとして) 辛抱強さが出てると思いますし
様々なパターンのある仕事は (技術・柄・他) いろいろな事・モノを取り入れ、自分なりにしてしまうある面での柔軟さだと思います。

   なかなかスゴイんですヨ・・・

まぁ、そんな日本の文化の片隅にオレも関わってると自負してますが・・・

   では、

“あなた、染とプリントの違いわかりますか?” と問われて答えられますか・・・???
もしできれば、多くの人が答えられると嬉しいんだけど・・・

  染とプリントを絵画でたとえるなら
  染・・・水彩   プリント・・・油彩   
    大雑把、そんな感じです。

染っていうのは 淡い色 の上に 濃い色 は染められますが 濃い色 の上に 淡い色 は染められません。
また 淡い色 の上に 濃い色 を染めるにしても、前に染めた 淡い色 が、その後の 濃い色 にも影響します。
 たとえば
最初に 淡い を染めて、次にそれよりかなり 濃い を染めたとしても
次に染めた  は以前に染めた  に影響されて、いくぶん っぽく なってしまいます。
 しかし
油彩であれば、極端に言えば 黒 バックの上に 白 で絵が描けますよネ。

このことは、染の染料、プリント(塗)の顔料 の粒子(分子)の違いによるものですが。

・・・ここまで来るとチョット難しくて飽きてきちゃいますよネ。 
       今日はこの位で

“染” は、濃い色 の上に 淡い色 は染められない!

    という事を覚えておいてもらえたらうれしいなぁ。

ちなみに 白 という染料は無く、白は染める生地の染まってない部分の色です。 (生地白)

              じゃ!

’09・8 “染っていうのはネ・・・” というプリント創りました。   個展会場で配ろうと思っております。



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2007年12月27日 Posted by 染師 麗 at 10:30染って・・・

染って・・・ 2

“ どこを切っても金太郎 ”

さて、 染って・・・1 からの続きなんだけど・・・

前回 チョット難しく?なって終わりましたが、イメージとしては下図のような感じを想像して下さい。



図2 図1のように生地 (織物) の断面を横から見た拡大だと思って下さい。
        その一本の糸が 図3
図3 その一本の糸は多くの繊維を拠り合わせて作ってあるので
        その一本の繊維が 図4
図4 ここまで来ると 染 と 塗 の違いがわかるんだけど
    (あくまでイメージですヨ。決して顕微鏡で見てこうなってるわけじゃ無いです)

染 (染料) というのは 分子レベルで水に溶けて繊維の中に入り込み
その繊維自体が 染まるわけなんですヨ。
  ・・・が
塗 (顔料) の場合水に溶けないため 粒子レベルで (分子とは比べ物にならない大きさ)
それを繊維に、いわば糊のようなもので貼り付けるという感じ。 (繊維にくっついてるという感じ)
   (日本画なんかはモロこれっすよネ)

顔料 の場合大きな 粒子という単位なので安定していて日光などに強いですが
(もちろん顔料の種類とかにもよりますが) 摩擦などには弱いです。
  それに対し
染料 は非常に小さい分子レベルなので安定感に欠け日光とかで退色したりしますが
生地自体が染まってるので、摩擦には粒子より強いです。
(勿論現在 染料 (化学染料) も進歩してきてるし、プリントも顔料・膠着材(糊)も進歩はすごいですが。

     ボチボチお疲れになったッショ!
       今日はこの辺で・・・

染 というのは繊維自体が染まってるので、金太郎飴のように繊維のどこを切っても同じ!

    そんな感じで理解してくれると シ・レ・ウ~!                じゃ!


’09・8 “染っていうのはネ・・・” というプリント創りました。   個展会場で配ろうと思っています。



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2007年12月29日 Posted by 染師 麗 at 11:43染って・・・

染って・・・ 3

“ 透過光で見る美しさ ”

オレらは普段の生活の中で モノを反射光で見てるわけなんだけども
例えば 木々を見上げた時、葉が重なり合って色に濃淡を出してるように
光が モノを すり抜けてきた感じで 染 を見ると、 とても

      キ ・ レ ・ イ

これはオレが工房に泊り込んで仕事をしてた時
仕事途中の張りっぱなしの生地を
ビールを飲みながら 寝転がって見上げてて思ったことなんだけども、
これが自分の中での 染 に対する見方を シッカリ させてくれた出来事なんだ。

 さて

 









写 1 床に置いて反射光で撮影        写 2 吊るして透過光撮影

写1・2 共に、渦巻き柄の 上は 染 下は 塗


写1 のように、床に置いて反射光で見ると 染 も 塗 もそんなに変わりは無いよネ。
  だけど
写2 のように、光が透過してくると その違いが ハッキリ してくるんだ。
  それっていうのは、
染 のほうの白は生地の白なので、何も染まってない 素の生地の色。
  一方
塗 のほうは地色の茶を染めた上から 顔料を摺り込み、無理やり白にした色。(地色+顔料の色)
理屈からいっても 塗 のほうは染めた生地の上に顔料で壁を作ってるようなものだから
後から光を当てた時、光を通しづらいですよネ。

これって 染 と 塗 のかなり ケッテー的な違いじゃないかなァ。
    オレ  そー思うんだ!
  
 ただここで、思い違いをされるとチョット困るんだけど
  オレは決してプリント(塗)が悪くて、染が優ってるっていうんじゃ無いんスョ!
     ・・・それは、ワカって。   
  まぁ、今日はこんなとこで・・・

染 って 透過光で見ると なんか キ・レ・イ

   ・・・って事 ワカってくれると う・れ・し~!                       じゃ!  

’09・8  “染っていうのはネ・・・” というプリント創りました。  個展会場で配ろうと思っております。



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2007年12月30日 Posted by 染師 麗 at 11:08染って・・・

染って・・・ 4

“ いかにして 染まらない ところを作るか ”

前回まで 染まる って事について説明してきたんだけど、ここでチョット・・・

お茶を飲んでて ついウッカリこぼしてしまい モヨウができてしまった。
これって  ・・・シミ  ・・・染 ???
まぁこれは、意図しないとこに モヨウが出来てしまったんだから シミっすよネ!

だけど、それと同じお茶で 生地全部を浸して
その生地が、お茶の色になったら これって 染 でしょ。
( もちろん基本は、この生地が ムラ無く 均一に 同じ色になって、 後から洗っても色落ちしない という事で無ければいけないんだけど )



先ず オレらの基本はムラ無く 均一に染めるということなんだけど
   それを踏まえて、
次に そこにどうやって文様をつけるか という事なんだ。

・・・で、ここで生地にどうやって文様を染めるかって事になってくるんだけど
この 文様染って、なんか逆説的になるんだけど
“ いかに 染まらない部分を作るか ” って事なんだ。

例えば最初に、みんな良く聞いた事あると思うんだけど 絞り染
オレは絞り染はやらないので、技術的な事は詳しくわからないんだけども
生地を糸で縛って その部分に染料が入らないようにしてやるんだ。

次に、名前くらいは聞いた事があるかもしれないけど ローケツ染
ローを熱して溶かしたやつで生地に文様を描く。
ローは冷えると固まり、そのローの部分が水分をはじくので染まらず、その部分が元の色で残るんだ。

そして華やかなイメージの 友禅染
これは糊で染まらないとこを作ってやるんだけども、簡単に説明すると
御飯粒を潰してやってネバーっとしたやつを 筒に入れ (ケーキに名前とか入れるときに使うような)
それで線を描いていくような技法。 (昔は糯米で作った糊だったんだけど、最近ではほとんどゴム糊)
その糊でくくられた線の中に色を挿していくんだ。

あと 型染
これには色々な方法があるんだけど 型紙 または 版木 を彫って
 1 型紙を置いて摺り込む  または 版木でスタンプ
 2 型紙で染料を含んだ糊を摺り その色を定着させる
 3 2枚の版木の間に生地を挟んで染める (板締め・夾けち染)

ものすごーく大雑把に言えば、現在の染って これらの応用なんすョ。

・・・あと別に 素描 って言うのがあるんだけど、これはフツーに絵を描くのと同じように
染料で 直に生地に描いてしまうのでチョット文様染というのとは違うかなァ~・・・???

俺が思う 文様染っていうのは 油彩のようにどんどんプラスしていって出来上がるのではなく
出来上がりから 染重ねる部分 をマイナスしてきて、そのマイナスしきった最終のとこから始めるんだ。

    チョット長くなっちまった。 今日はここらにして・・・

文様染 っていうのは “いかに染まらない部分を作るか” なんだ。

 そんなチョット逆説的なことわかってもらえると シ・レ・ウ~!
                                        じゃ!



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2008年01月04日 Posted by 染師 麗 at 09:00染って・・・

染って・・・ 5

前回 いかに染まらないところを作るか ということについてだったんだけど・・・

その 染まらない部分 を作るのが 防染材 というやつなんだ。

これは ロー やら 糊 やらで、染まらないところを作るんだけど
後々、染が終わってからその防染材を取り除けなければダメなんだ。
 だって、染め終えてから着物や帯に仕立てた時
その防染材が残ったままだと柄の部分がゴワゴワしててなんか変でしょ・・・

・・・で、その防染材なんだけど大まかに分けて 2通り。
水分で防染するか、油分で防染するかなんだ。

“アレェ~???” って思ったアナタ!  す・る・ど・い!
水で水を防ぐの?     そーなんです。

                  水系 ・・・ 絞り
              /       ・・・ まのり ( 糯粉 他 )
        防染材
              \
                  油系 ・・・ ロー
                      ・・・ ゴムのり

油系のは、油分は水をはじくから なんとなく感じわかるよね。
では、水系のものについてチョット説明。
 
 先ず 絞り
これは生地を糸などで縛って染めるわけなんだけど 縛って(絞る)すぐに染料の中に浸したら、かえってその絞った部分が濃くなってしまうんだ。(毛細管現象ってやつ?)
絞ったら 先ず水に浸して、それから 染料液の中に浸すという順番でやらないといけないんだ。
何故かっていうと、絞った部分に先ず水が入り込み、その絞った部分の 先にたまった水が、後から来る染料を入りづらくさせるからなんだ。
それに対し、絞っていない部分というのは 水がたまってないので、後からの染料と馴染んでしまうんだ。
 
 次に まのり
この場合も 糊に含まれてる水分が 染料を入って来ないように防いでいるんだ。
だから まのりの中には 塩などを入れて、水分を保つように工夫してあるんだ。

こんな感じで、水で水を防ぐという事は (特に絞り) その染まる部分と染まらない部分のキワが お互い馴染んでしまい ボーっとした感じなんだ。
それに対し、油系では水分をはじくので染まる部分と染まらない部分のキワが ハッキリしてるんだ。



 絞り染








 ローケツ染








 友禅染






ちなみに友禅染の写真の柄の周りには細い線があるよね。 これが糊でくくった跡なんだ。
この線(糊)で囲ってやって、部分部分に色を挿していくから細かい仕事ができるんだ。

で、最後に これら防染材を取り除くんだけど・・・

絞り は、水のみで防染してるから 乾けば OK だよね。(勿論 糸は解かなけりゃいかないけど)

まのり の場合も簡単に言えば御飯粒がくっついたようなものだから、水に浸してふやかして こすり取ってやれば良いですよね。
(よくTVとか本で見る 川でやってる友禅流しはこの段階で、役目の終わった糊とか生地に残ってる余分な染料を洗い流してやってるんだ。)

油系 (ロー・ゴムのり・他) は、油分は油で取れるのでドライクリーニング。

一応ここまでで 染って・・・ というアバウトな流れを説明してきたんだけど
勿論 ここまでの過程の中にはもっと細かい・深いことがいっぱいあるんすョ。
追々、仕事途中のブログとかで説明していきたいと思ってますが・・・

この続き物のブログに付き合ってくれた人 ホント ありがとでした。

防染材 の持つ特徴が 染のアジ になってくる。

そんな事、覚えておいてくれると シ・レ・ウ~~~~!
                                    じゃ!



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2008年01月07日 Posted by 染師 麗 at 11:08染って・・・